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ニュース&レポート

川崎市立新作小学校増築工事 神奈川県産スギのJAS構造材を用いた公共建築

 先般、「花粉症対策 初期集中対応パッケージ」が閣議決定されたことにより、今後、国産スギ材の更なる利活用が求められます。こうした中、川崎市では、神奈川県産スギのJAS構造材等の国産材を使用して、市立新作小学校の増築工事を手掛けています。今回は、同増築工事の概要や建物の特長、木材利用量などについてご紹介します。

川崎市内の小中学校で唯一の木造校舎

 ナイスグループは、川崎市高津区で建築中の市立新作小学校の校舎増築工事に携わっています。増築校舎は、地上3階建ての木造で、川崎市内に現存する市立小中学校としては唯一の木造校舎となります(図1)。同校の生徒数増加に伴い、普通教室の不足が見込まれることから、その対応として校舎の増築が計画されました。設計を㈱田設計事務所、施工を㈱八木工務店が担当し、ナイスグループは構造設計と木材調達を担いました。

川崎市立新作小学校増築工事 画像建築概要

 構造について、当初は鉄骨造で計画されていましたが、学校施設における積極的な木材利用が求められることに加えて、狭い搬入経路への対応や南側に隣接する既存の擁壁への重量負荷軽減などが必要なことから、軽い構造部材で構成でき、搬入が容易な木造が最適であると判断され、施工が可能であることが確認されたうえで採用に至りました。学校の校舎は窓が大きく、長辺方向の壁量が厳しくなることから、壁の一部に(一社)日本木造住宅産業協会仕様の高耐力耐力壁が採用されています。高耐力耐力壁の柱脚には大きな力がかかるため、接合部には特注の製作金物を使用しています(図2)。また、8m×8mスパンの教室については、上部床梁に大断面集成材を用いることで、無柱の大きな空間を実現しているほか、一般流通材との組み合わせによって材積を抑えています(図3)。耐火仕様については告示による1時間耐火構造で、主に21㎜厚の強化石膏ボードの2枚張りで木部材等を被覆しています(図4)。

目標値を上回る木材使用量を実現

 同校舎には、柱に神奈川県産スギのJAS構造材が採用されているほか、土台に宮崎県産ヒノキ、梁桁に長野県産カラマツや栃木県産スギなど、国産材がふんだんに用いられています。川崎市では、木材利用促進に向けた取り組みの一つとして、「川崎市建築物等における木材の利用促進に関する方針」を策定しており、木材使用量の目標値が設定されています。このうち、学校(小学校、中学校)等は、温かみと潤いのある子どもたちの学習生活環境づくりに向けて、積極的に木材利用を図る施設として位置付けられており、木材利用量については床面積1㎡当たり0.01㎥という目標値が掲げられています。同校舎における木材利用量は185.7㎥で、木材利用率は1㎡当たり0.2㎥と、目標値を大きく上回っています。川崎市では今後、木構造上棟を撮影した映像の活用や、同校における出前授業などの取り組みを通じて、木材利用の更なる普及啓発に努めていく考えです。

>川崎市 木材利用に向けた取り組み